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医療機関における広告規制について

医療機関における広告規制について

2023年10月1日

美容医療のホームページで過度に受診をあおる表現が増え、消費者トラブルが発生していること等を踏まえ、2017年に医療に関する広告規制の見直しを含む医療法の改正が行われ、ウェブサイト等による情報提供も規制の対象となりました。

また、不適切なウェブサイト等に関する情報を常時監視し、抵触する事例に行政が迅速に対応するための措置として、ネットパトロールが開始されました。
これは専門業者に加え、規制に違反するウェブサイトを発見した一般の人が厚生労働省にネットで通報できるものです。
違反が疑われると、行政機関による報告命令、立入検査が行われます。ここで、違反の事実が発見されれば、当該広告の中止や広告の是正が命じられます。すぐに是正し報告すれば処罰を受けませんが、無視や再三にわたって警告や命令に従わない等悪質な場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金、さらに開設許可の取り消しや一定期間の閉鎖命令などの厳格な行政処分が適用されます。


ここで、医療広告はどのように定義されているのでしょうか。
それは、「誘因性」、「特定性」のいずれの要件も満たす場合に広告とされます。
誘因性」とは、患者の受診等を誘因する意図があること、「特定性」とは、医師や歯科医師の氏名、診療所や病院の名称が特定可能であることとなっております。
一方で「広告とみなされないもの」としては、以下のようなものが挙げられています。

①学術論文、学術発表等
②新聞や雑誌等の記事
③患者等が自ら掲載する体験談、手記等
④院内掲示、院内で配布するパンフレット等
⑤医療機関の職員募集に関する広告

医師やスタッフ募集の広告も患者を誘因する目的ではないため医療広告とはなりません。ただし、広告とみなされないものとされていても、次の点には注意が必要です。

・論文や学術発表は日本医学会や日本歯科医学会に属する学会での発表実績であればウェブサイトに掲載しても大丈夫ですが、医療機関が自院の権威付けのために任意に結成した、実態の乏しい学会などでの発表実績を掲載すると記載対象になります。
・新聞や雑誌の記事も、料金を支払って掲載させる記事広告は規制の適用を受けます。また、それをウェブサイトに転載した場合も同様です。

医療法により、法または広告告示により広告が可能とされた事項以外は広告してはならないとされていますが、医療広告ガイドラインで限定解除要件を満たした場合に限り、他の事項を広告できるとされています。
限定解除要件とは以下の4つです。

①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブ
サイトその他これに準じる広告であること
②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することそ
の他の方法により明示すること
③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること



では、広告規制に違反する広告とは、どのようなものなのでしょうか。
以下に、ガイドラインなどで例示されているものの一部をご紹介いたします。

(1)内容が虚偽にわたる広告
   ex.) 「当院の治療は絶対に安全です」、手術前後の処置が必要であるにもかかわらず「1日で全ての治療が終了します」、加工修正した術前術後の写真の掲載など
(2)他の病院または診療所と比較して有料である旨の広告
   ex.) 「当院は、美容外科手術における脂肪吸引術の件数において、日本一の実績を有しています」、「著名人も当院で治療を受けております」など
(3)誇大な広告
   ex.) 「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください」「○○歯科医院△△インプラントセンター」など。「○○センター」の呼称は、公的施設と誤認されるため禁止されています
(4)公序良俗に反する内容の広告
(5)患者等の主観に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談
(6)治療等の内容または効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前後の写真など
(7)品位を損ねる内容の広告
   ex.) 「〇月まで○○キャンペーン実施中」、「○○治療し放題プラン」など
(8)医療法以外の法令等で禁止されているもの
① 薬機法:医薬品・医療機器等の名称、効能・効果、性能等に関する虚偽・誇大広告、承認前の医薬品・医療機器の名称や、効能・効果、性能等の記載
② 健康増進法:サプリメントなどの効果等について、事実に相違する表示や誤認させる表示
③ 不当景品類及び不当表示防止法、不当競争防止法などに抵触する表示

制作段階から基本的な広告規制のポイントを理解しておく必要があるかと思います。なぜなら、ネットパトロールでの指摘にはすぐに対応する必要があるにも関わらず、是正報告が受理されるまでにはかなりの手間がかかるためです。

2023年2月に厚生労働省から公開された「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第2版)」では、広告が禁止される事例、広告可能事項の記載が不適切な事例などが図解入りで詳細に解説されていますので、ぜひご覧ください。