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「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」の改訂について

「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」の改訂について

2022年12月27日

令和4年12月22日付で、国税庁より「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」が改訂されました。virtual_currency_faq_03.pdf (nta.go.jp)
この中で、最も議論を呼びそうな「2-2 暗号資産取引の所得区分」「2-3 暗号資産の必要経費」について以下で説明していきたいと思います。

「2-2 暗号資産取引の所得区分」について
暗号資産取引により生じた利益は、原則として「その他雑所得」 に区分とし、例外的に「事業所得」又は「業務に係る雑所得」と区分されました。

ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が 300 万円を超える場合には、次の所得に区分されます。

・「暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合」・・・原則として事業所得区分されます。
・「暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合」・・・原則として雑所得(業務に係る雑所得)

この改正の背景には、雑所得に係る所得税基本通達の改正があります。

ここで留意しなければいけない点は、収入金額300万円超と帳簿書類の保存の2要件を満たせば、すぐに事業所得になるかという点です。

個人的には、この2要件を満たしただけで事業所得として考えてしまうのは、早計だと考えています。

事業所得とするためには、最高裁判例(⑴自己の計算と危険において独立して営まれている、⑵営利性、有償性を有している、⑶反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる業務である)に照らし合わせて判断していくことが必要だと考えています。

「2-3 暗号資産の必要経費」について
「その他雑所得」の場合、暗号資産の売却による所得から控除できる必要経費が「譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額」に限定されました。
つまり、「その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額」は、必要経費として認められないこととなりました。

一方、「事業所得」又は「業務に係る雑所得」の場合は、「その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額」も必要経費として認められます。

ここで、重要なポイントは、暗号資産の売却等に際し「直接」要した費用の額、と「直接」という語句が入った点です。

つまり、以下のような支出は必要経費として控除できない可能性が出てきました。

・暗号資産に関する情報を収集するためのセミナー参加費(交通費含む)、オンラインサロン会費、有料情報サービス費用、交際費など
・自宅(賃貸)の一角を暗号資産取引専用に使用していた場合に支払家賃を按分したもの
・筆記用具の購入費、備品等の減価償却費
・売却目的以外の暗号資産の移転手数料
・税理士報酬

ただし、「その他雑所得」の場合にも、FTXなどの取引所破綻損失、詐欺・盗難による損失などは必要経費として認められる可能性があります(所得税法51④)。

よって、これらの経費については、専門家と協議の上、対処していく必要があるでしょう。
また、過去の申告についても対応をどうすべきか専門家と協議する必要があるかと思われます。